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★パル判決書を巡って、西部邁氏に反論する★
東京裁判の判事で唯一の国際法専門家であったラダ・ビノード・パル博士は、膨大な判決書を書いた。それは講談社学術文庫で1千数百ページに上る。私はこの20年来、毎月1回研究会を開いて、このパル判決書を詳細に読み込んできた。 他の判事の判決書は法廷で読み上げられた。だが、パル判決書は法廷で1行も読み上げられることはなかった。そればかりか、講和条約ができて独立回復する前は出版することも許されなかった。
パル判決書の研究を続けてきて、そのはずだとつくづく思う。東京裁判は戦前、昭和3年以降20年までの日本を諸国を侵略した極悪国家と決めつけ、その罪を問うて戦前の日本は暗黒だったと規定することを狙っていた。いわゆる東京裁判史観である。
これに対してパル判決書は、東京裁判のここは正しいがここは間違っている、日本はこの点では間違いを犯したがこの点は正しかった、といったものではない。東京裁判の全面否定なのである。その基準となっているのは事実と法律である。事実を法律に照らして検証する。この態度に徹している。その結果としての東京裁判全面否定なのだ。
日本の独立後、パルさんが来日した折にさる人が、日本の味方になってくれたとパルさんに礼を述べた。するとパルさんは憤然として、自分は日本を贔屓(ひいき)にしたわけでも肩入れしたわけでもない、事実を法理論を厳格に適用して分析し、述べただけだ、と言ったという。確かに、パル判決書を読み込んで強く感じるのは、その客観性である。だからこそ、パル判決書は価値があるのである。
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